ジュースのおごり
久々に嫌な奴に会った。
藤代拓海は、昔の知り合い…正直知り合いたくもなかった相手、天地寿に呼び出された後、
不愉快で、そしてどこか不安な心持ちで帰途についていた。
呼び出した内容は簡単だ。
天地が、「ありがたくも」自分をナンバー2に「してくださる」という。
反吐が出るほど「ありがたい」申し出だった。
天地が考えていることなど、昔から分かっていた。
凶暴で尊大で傲慢、そして冷酷な野心家。
そんな奴に付き従うなど考えたくもない。
そして…あの男の狙いはなによりも。
「おーい、拓海!」
「!」
突然聞きなれた声をかけられ、拓海は振り向いた。
「花。」
そこにいたのは…同じ下宿の、同居人。
そして、自分にとって大事な相手。
その姿を見て、自分の表情が柔らかく緩むのを感じた。
「今、帰りか?」
「ああ。お前もか?」
「マリ姉に買い物頼まれてさ、ちょっと遅くなっちまったんだ。
迫田も蓮次も逃げてな。」
「ははっ、あいつら牛乳やら卵やらのビニール抱えて歩きたくなかったんだろ。」
「ま、確かに似合わないな〜あの二人には。」
「お前は似合うけどな。」
「ハッハハ、サンキュー。」
何気ない冗談に笑う花に、拓海はほんのりと気持ちが温まるのを感じる。
ケンカとなれば滅法強いのに、普段は呑気者で。
だが仲間を想う気持ちは誰よりも熱い。
もし自分が誰かのところにつくなら。
それは決して天地のような男じゃなくて。
「…あれ、拓海。」
「ん?」
ふと、花が声をかける。
拓海が顔を上げると…花の手が拓海の首筋に触れていた。
「…!」
その花の表情は真剣で。
どきり、とする。
「な、なんだよ?」
「…ここ、どうかしたのか?」
「あ。」
花の言葉に、拓海は天地にやられた傷を思い出した。
河川敷を一段下に叩き落されたのだ。
そのときに、擦りむいていた傷だった。
「…いや、ちょっとな。」
「……そっか。」
花はそれ以上は聞かずに、手を引っ込めた。
「悪い。」
「いーよ、謝るなって。」
拓海は、ワケをいえないことを謝罪した。
ふと、花は持っていたビニール袋に手を入れ。
ジュースを一本、取り出した。
「拓海、ほい。」
「おっと。」
無造作に放られたジュースの缶を拓海は受け取る。
花はにこっと笑って、言った。
「何があったかは知んないけどさ、あんまり気にするなよ。」
「…花。」
そうだ、この暖かさだ。
自分が何よりもそばにおきたいもの。
護りたいもの…。
もらったジュースはひやりと、冷たくて。
拓海は天地につかまれた首筋に当てた。
「…気持ちいいな。」
「拓海ーーっ。何してんだあ。」
気づくと花はもうだいぶ向こうに歩いていっていた。
「悪い、今行く!」
「早く来いよーっ。」
オレの場所は ここにある。
この笑顔の傍に。
ここが「オレたち」の居場所。
end
バチあたりにも二日連続でWORST小説更新です。
今回はWORST一の美少年(笑)拓海くん。
12巻で天地君に会ったあとの話です。
原作を知らない人に不親切な文章になってしまってますね。
って、二次創作はそういうものなんですが(^^;)
そのうち鬼畜少年の天地×花も書きたい今日この頃。
一つ書くと加速するように萌え思考が広がります。
2年ぐらいは萌えナシでこの漫画を読んでたのに、不思議なものです。
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